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「弟の夫」ネタバレ感想 家族の形は自由!でも無自覚な差別はあり続ける


今NHKのBSプレミアム放送されている、「弟の夫」というドラマが話題になっています。

海外で音信不通になっていた弟の結婚相手の「男性」が、兄の自宅にやってくるという同性
愛をテーマに描いた作品です。

そして個人的に今年読んだマンガの中で、もっとも心に響いた作品でもありました。

話題作の弟の夫のあらすじと感想をネタバレありで、語りたいと思います。

「弟の夫」あらすじ

 

小学生の娘を育てるシングルファザーの折口弥一

2人きりで暮らす家に、ある日髭もじゃで大柄の外国人男性が訪ねてきます。

弥一には双子の弟の良二がおり、実はこの髭もじゃの男性こそが弟の「夫」であるマイクでした。

弟の良二は成人後カナダへ移住しており、弥一とはほぼ絶縁状態にありました。

なんと弥一が知らないうちに、良二はマイクと同性婚をして平和な日々を過ごしていたそう。

ですが良二は不運にも事故で命を落としてしまったのです。

しばらく弥一の家に滞在することになったマイク。

ですが弥一はゲイや同性婚への偏見の気持ちが抜けず、戸惑いやいらだちを感じる日々が始まりました。

というのも弥一が良二と何となく疎遠になったきっかけは、高校時代の良二のカミングアウトだったのです。

自分はゲイだと話す良二を、無意識のうちに避けてしまっていた弥一。

それがずっと心に引っかかっていました。

トラウマを抱えている弥一でしたが、弟の夫だというマイクとの出会い。

そしてマイクを偏見の目で見ることなく、まっすぐと慕う娘の存在や、まわりとの出会いによって弥一の考え方は変化していきます。

普通とは何か。

普段差別にさらされることがない人には理解しづらい、「普通」から外れた人への無意識の差別。

偏見について問う、新しい形の日常系作品です。

「弟の夫」ネタバレありの感想・見どころ・考察

ゲイ作家が「異性愛者に向けて」描いた作品である

弟の夫は全4巻のコミックスで原作者はゲイ漫画家の第一人者、田亀源五郎先生です。

国外のゲイメディアでも活動しており、これまで多くの傑作ゲイ漫画を生み出してきました。

いわゆるBLとは違って、登場する男性キャラはガチムチのおっさんが中心です。

そのため絵柄だけで敬遠する人もいるかと思いますが、今回の弟の夫は全年齢向け。

むしろ子供たちにも読んでほしい作品と言えます。

田亀先生はこれまで同じくゲイの方向けの漫画を執筆してきましたが、「弟の夫」はずばり異性愛者の人の視点に立って描かれた作品です。

主人公の弥一は一人娘がいる異性愛者。

その弥一を視点に、家族は「普通の形」でないといけないのか、そして普通とは何か、異性愛者だからこそ疑問を持ちたい、家族の形について考え直せる作品です。

弟の「嫁」だったらすぐに家族として受け入れられる

弟の良二がゲイだとカミングアウトした際も、なんとなくその話題に触れない方が良いと過ごしているうちに、弟と埋まらない溝ができてしまいました。

そこに現れた、かつて弟と結婚生活を送っていたという外国人男性のマイク。

弥一は覚悟が決まらないまま、日本にやってきたマイクと娘との3人で共同生活を送ることになります。

まず印象的なのは、マイクと弥一の初対面のシーン。

マイクは夫の良二とあまりに弥一が似ていたことから、つい強く抱きしめてしまいます。

弥一は心の中ではありますが、「放せホモ!」と侮辱する言葉でマイクに嫌悪感をあらわにしています。

そして読んでいる側も同じく、意外性と違和感を覚えた人がいたかと思います。

抱きしめるマイクもマイクでちょっとアレなのですが、私はふとこのシーン弟の「嫁」だったらどうだろうかと考えました。

「ないわー」とは思っても、「キモイ」と感じる人は少ないのではないではないかと感じました。

むしろ人によっては夫を失って悲しいのだろう、取り乱すのも仕方ないと受け入れる読者も多いかと思います。

弟の嫁だったら、面識がなくても家族なんですよね堂々と。

ですが弥一は1巻の時点で、マイクを自分の縁者としてはまったく認めてなかったどころか強い拒絶感もあったわけです。

ある意味この物語のすべてを語っているシーンでもあるなあと感じました。

 

カナダでは同性婚が認められていて、異性間で結婚するのと何も変わりません。

なのに性が違うだけでここまで対応が違う。

それどころか弥一は、1巻でどっちが男役なのか女役なのかという妄想までしてしまいます。

つまり2人の性生活のことまで想像しています。

これも男女の夫婦なら、わざわざどっちが男で~ということも考えもしませんよね。

弥一を含め一般的には、男性と女性がカップルという形であるという型にはめて考えていることに気づかされました。

弥一もまた「普通」ではない家族を背負っている

弟の嫁は同性愛を中心に、いわゆる普通ではない関係がほかにも登場します。

それこそがシングルファザーである主人公の弥一です。

作品内では「父親と母親が揃っているのが普通」と周囲が思っているのを匂わすシーンがいくつか登場します。

ほかにも、マイクたちが旅行した温泉では刺青を入れた外国人が利用を断られるシーンも盛り込まれています。

・LGBT
・片親家庭
・刺青

これって「正しくないもの」で、周囲の人々にとって有害なものなのでしょうか。

表立って差別はされないものの、みんな心の中で「区別」をしている。

弟の夫は、そんな無意識に「区別されている人々」の日常をリアルに描きつつも、説教臭くそれはいけないことだ!差別を完全になくすべきだ!と語っているわけではありません。

現実問題、区別をなくすことはむずかしいのでしょう。

でも、人を肩書や家庭環境、見た目だけで判断するのは、それだけ自分も型にはまって生きていかなければという苦しさも生むのではないかと感じました。

偏見の目でマイクを見る大人とは違って、弥一の娘をはじめとする子供たちはマイクの肩書きにとらわれず、その優しい人柄に惹かれてどんどん仲良しになっていきます。

私たちはいつから「肩書き」で人を判断してしまうようになるのでしょうか。

もっとみんなが大らかに、「これはこうでなければならない」という考え方を減らしていけば、生きやすくなるのではないでしょうか。

広い視野と考え方を持つことが重要だと、改めて気づかされ、根本的な考え方を見直したくなる作品です。

作者の田亀氏は、小学生でも読めるゲイ漫画を描いたと話していました。

そのとおり、ぜひ自分の子供にも読ませたい作品です。

ドラマはオリジナル展開の予定!全3話をお楽しみに

良二とマイクは愛し合っていた、だから結婚した。

でも本当に残念なことにマイクの最愛の夫、良二は命を落としてしまった。

そこから始まる弥一とマイクとの奇妙な共同生活は、笑いあり涙ありです。

2話まで視聴しましたが主演の佐藤隆太さんのナチュラルな演技と、把瑠都さんのマイクのクオリティの高さが何とも言えません。

原作の空気を壊さずに、淡々としていてどこかノスタルジーを感じるドラマになっています。

全3話だそうですが展開は原作とは少し違うとのこと。

今からならU-NEXTで1話を無料で視聴できるようでした。

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ここ数年LGBTという言葉が世間で浸透してきつつあり、以前とくらべると同性愛などの複雑な性についてはかなり寛容化していると思います。

しかし、それは私たち側の感覚であり、LGBTに悩んでいる人は表に出ていないだけで数多くいるかと思います。

そしてそれ以上に多いのが、無自覚の差別をしているLGBTではない我々。

そんな無自覚の差別に、はっと気づける作品でした。

原作コミックスも本当に名作なのでぜひぜひ。

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